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メンデルスゾーン 劇音楽「夏の夜の夢」より序曲(Op.21)、スケルツォ・間奏曲・夜想曲・結婚行進曲(Op.61)

 皆さんは現実と夢の区別をつけられますか?普通に考えれば、つけられますよね。普段の日常生活が現実だし、眠っているとき見るのが夢で、ちゃんと頭ではわかっています。でも、たとえば、憧れの人に出会っただけで「夢」見心地になるし、夢で憧れの人とデートして「夢よ覚めるな=現実であってくれ~」と願ったりします(あるいは悪夢があまりにもリアル(=現実的)で目覚めが悪い・・)。つまり、現実と夢は白黒に峻別できるものではなく、いつでも隣り合わせあるいは溶け合って共存している事態だといえないでしょうか?つまり、「現実/夢=人が体験できるこの世の世界」と定義できます。ところが、「この世」とくれば「あの世」があるはずです。いわば人が絶対体験できない、あちら側の世界です。しかし、わずかながら人はあちらの世界を垣間見ることができます。唯一、「夢」を媒介にして…。

 シェークスピアが書いた戯曲「夏の世の夢」は、まさに「この世」と「あの世」が夏至の夜(夏至は昼夜の長さが最も異なるため、バランスを崩してあの世の妖精や悪魔が登場するといわれています)の「夢」を舞台に百花繚乱する神秘的な物語です。この物語で「夢」とは「アテネ近郊の森」が舞台となります。

 戯曲のあらすじと上記の「現実」「夢」の関係は次の通りです。ただし、上記の通り、現実もすべては「夢」に包含されることになるでしょう!まさにすべて「夏の世の夢」!!

【現実1】アテネ公シーシアスとアマゾン国のヒポリタとの結婚式が間近に迫っており、その御前から舞台は始まる。貴族の若者ハーミアとライサンダーは恋仲であるが、ハーミアの父イジーアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとする。ハーミアは聞き入れないため、イジーアスは「父の言いつけに背く娘は死刑とする」という古い法律に則って、シーシアスに娘ハーミアを死刑にすることを願い出る。シーシアスは悩むものの、自らの結婚式までの4日を猶予としてハーミアへ与え、ディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせる。ライサンダーとハーミアは夜に抜け出して森で会うことにする。ハーミアはこのことを友人ヘレナに打ち明ける。ディミートリアスを愛しているヘレナは二人の後を追う。ハーミアを思うディミートリアスもまた森に行くと考えたからだ。

【現実2】シーシアスとヒポリタの結婚式で芝居をするために、ボトムら6人の職人が一人の家に集まっている。役割を決め、練習のために次の夜、森で集まることにする。かくして、10人の人間が、夏至の夜に妖精の集う森へ出かけていくことになる。 

【夢1】森では妖精王オーベロンと女王ティターニアが連れご子を巡って、仲違いしていた。機嫌を損ねたオーベロンは妖精パックを使って、ティターニアのまぶたに花の汁から作った媚薬をぬらせることにする。キューピッドの矢の魔法から生まれたこの媚薬は、目を覚まして最初に見たものに恋してしまう作用がある。パックが森で眠っていたライサンダーにもこの媚薬を塗ってしまうことで、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになり、大混乱。また、パックは森に来ていた職人ボトムの頭をロバに変えてしまう。目を覚ましたティターニアはこの奇妙な者に惚れてしまう。

【夢2】オーベロンはティターニアが気の毒になり、ボトムの頭からロバの頭をとりさり、ティターニアにかかった魔法を解いて二人は和解する。また、ライサンダーにかかった魔法も解かれ、ハーミアとの関係も元通りになる。一方、ディミートリアスはヘレナに求愛し、ハーミアの父イジーアスに頼んで娘の死刑を取りやめるよう説得することにする。

【現実3】これで2組の男女、妖精の王と女王は円満な関係に落ち着き、6人の職人たちもシーシアスとヒポリタの結婚式で無事に劇を行うことになった。

さて、メンデルスゾーンが作曲した劇音楽「真夏の夜の夢」です。まず、17歳のメンデルスゾーンがシェークスピアの「真夏の夜の夢」のドイツ語訳を読み,序曲を一気に作曲しました。その17年後,プロシア国王フリードリヒ・ウィルヘルム4世に命じられて書いたのが残りの12曲です。

以下は、組み合わせてコンサートで演奏される曲群です。

  • 序曲 Overture op.21

ソナタ形式。冒頭からすべては「夢」であることを暗示。木管楽器群による「何かおこるぞ」という感じの微妙な「森」の和音に続き,弦楽器の繊細な動きによる第1主題が出る。これは妖精の戯れを表現している。続いて,シーシアスの宮廷を示す壮麗なメロディ。第2主題は劇中に出てくる恋人たち。甘く下降してくるような優雅なメロディ。さらにオフィクレイドを含む金管楽器のリズムに乗って職人たちの踊るベルガマスク舞曲が繰り出される。展開部は妖精たちの主題が中心。再度,冒頭の管楽器の和音が出てきた後,再現部へ。最後に再度,冒頭の和音で出てきて,静かに消えるように終わる。

  • スケルツォ Scherzo op.61-1

森の中の妖精のささやきを思わせるような軽妙な曲。第1幕と第2幕の幕間に演奏される。木管楽器が軽やかにスケルツォの主題を演奏した後,弦楽器に引き継がれる。

  • 間奏曲 Intermesso op.61-5

2幕と第3幕の間の間奏曲。2つの部分からなる。前半では恋人ライサンダーの姿を求めてさまよう娘ハーミアの憂いを表現。後半は,第3幕で登場する職人たちの素朴で陽気な行進曲。

  • 夜想曲 Notturno op.61-7

3幕の終わりで演奏される。劇中に出てくる2組の恋人たち(ライサンダーとハーミア/ディミートリアスとヘレーナ)が森の中で眠る情景を描く。独奏ホルンの演奏するロマンティックなメロディが大きな聴きどころ(ホルン奏者にとっては災難もとい難所)。中間部以降は弦楽器のしっとりとした響きが絡み美しい。

  • 結婚行進曲 Wedding March op.61-9

言わずと知れた著名な曲。ワーグナーの「ローエングリン」よりと並び結婚式での常連曲。

獅子鷹

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